『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。
産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。
いきなり健康教育を任された!
先日、人事担当者から社員向けの健康教育を依頼されました。「保健師さんならできるでしょ?」と言われたのですが、正直ほとんど経験がありません。就業期間内に社員を集めるとのことで、参加してよかったと思われる内容にしたいのですが。
まずは何から始めればよいでしょうか。
「あなたなら大丈夫」という期待とともに健康教育を任されたのですね。
おめでとうございます。
しかも会社が参加者を集めてくれるなんてうらやましい(笑)。
これをチャンスにしてがんばってくださいね!
ではさっそく準備を始めましょう。
まずは教科書的なおさらいとして、健康教育を行う目的を思い出してください。
『①知識の習得・理解、②態度の変容、③行動の変容』の3つでしたよね。
これを肥満改善教室でたとえると、参加者が健康教育のあと、
①肥満の害や正しい改善策の知識を得て「このままではまずい」と自分事として理解し、
②「本気で減量するぞ」という態度の変容がおこり、
③「毎日ウォーキングを始めた」という行動の変容がおこる。
これが健康教育のあるべき姿です。
常にこれを意識して準備しましょう。
健康教育は『企画→実施→評価』の手順で進めていきます。
私は最も大事なのは企画だと思っています。
なぜなら「企画」がしっかりしていれば自信と余裕をもって「実施」できるので、健康教育もうまくいくし、「評価」するときもヘコまずに済みますから(笑)。
企画では最初に、対象集団の把握を行います。
年齢、性別、健康状態、業務内容、労働環境、職場風土等の情報を集めて、対象集団の特徴を踏まえた健康課題を抽出します。
それをもとに今回の健康教育のテーマと目的・目標を決めましょう。
目標は参加者の行動変容に着目して具体的に表現します。
たとえば健康教育後に「なるべく運動するようになる」という漠然とした目標では達成度を判断しづらいですよね。
「1回30分以上の有酸素運動を毎日行うようになる」のように具体的な表現にしたいです。
目的は目標をいくつか達成することで達せられる“ねらい”のことをいいます。
「対象集団の肥満者率が2%低下する」など、こちらも具体的にしておきましょう。
続いて企画書づくりです。
ポイントは、この段階で前もって「評価の方法」を決めておくことです。
評価には、プロセス評価(結果をもたらすまでの手段の評価)、影響評価(どんな影響を与えたか)、結果評価(どんな結果をもたらしたか)と、これらを合わせた総合評価(事業全体の評価)があります。
あとで困らないように、それぞれ「何をどんな基準で評価するのか」を決めて、評価のための材料集めの手段も企画書に盛り込んでおくといいですよ。
また、内容をつくる時には熱意のあまり、必要だと思う知識や方法をもれなく全部伝えたくなりますが、
そんなときほど参加者はしらけた表情になり、それを見てこちらの心が折れそうになる、という悲劇がおこりがちです。
こちらが伝えたい・知ってほしいと思うことと、相手が知りたい・興味があることにはズレがあるので、看護職のねらいを参加者とも共有できるように内容を工夫してくださいね。
企画書ができたらそれに沿って媒体や原稿を作成します。
そして無事に実施できるように、事前の入念な練習もお忘れなく!
ピュア産業看護事務所の保健師今田から、
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