『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。
産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。
高ストレス者に“どうせ”と言われ・・・
先日、ストレスチェックの高ストレス者の面談をしていたら、「どうせ何を言っても変わらない」と言われてしまいました。そう言われて私自身も「そうだよな・・・」と内心思ってしまい、うまく言葉を返すことができずモヤモヤしています。
それは、本当にモヤモヤしてしまう場面ですよね。
対象者さんを心配し、力になりたいと思うのに、私たち看護職はストレス源をきれいに取り除くことも、つらさを代わりに背負うこともできないのですから。
かといって私たちまで、「どうせ何も変わらない」と思考停止してしまったら、ますます救いがなくなってしまいます。
絶対的な正解がある話ではありませんが、「あなたが返したいのはどんな言葉か」を一緒に考えてみませんか?
この場合、まずは共感し受容したいと思いますよね。
ところが共感の示し方も意外と難しいです。
たとえば、相手の言うことに全面的に同意して「そうですよね。何も変わりませんよね」と返すわけにはいきません。
励ましたくて「そんなことありませんよ」と伝えたら、相手が「私が話したことを否定された」と受け取ってしまうこともあります。
しかも、あなたも内心では「そうだよな・・・」と思っている状態で、「そんなことない」と言うのは自分にウソをつくことにもなりますよね。
ご参考までに。
私は、こんな場面に遭遇したとき、『傾聴』モードのスイッチをオンにします。
焦って無理に解決を図ろうとしないためです。
耳元でカチッと音が聞こえた気がするくらい(笑)、切り替えたことをはっきり意識して、対象者の感情(たとえば、しんどさ、息苦しさ、怒り、虚しさ、悲しさなど)に対して共感を示します。
一方で、対象者のストレス源(たとえば、上司の理不尽さ、過剰な責任の押しつけ、仕事以外の問題など)については状況確認にとどめ、良し悪しを判断するようなことは言わないように気をつけています。
対象者を取り巻く状況や環境はかなり複雑なはずなので、私が安易に判断して解決策を提案したら、反撃を受けて泥沼にはまる危険が高いですから。
『傾聴』は、こんなとき最強の武器になりますよね。
専門職のスキルを使って、対象者の弱音やグチを上手に聴くことも必要なケアだからです。
とくに普段から多くのストレスをかかえてがんばっている高ストレス者のなかには、気軽にストレスを発散したり、グチを吐き出せる場所をもっていない方も少なくありません。
過去に私が高ストレス者面談をしたある管理職は、面談を希望した理由として「保健師さんなら何を話しても後腐れないと思って」と言っていました。
これもアリなんですね(笑)。
ところで、「どうせ何を言っても“変わらない”」のは何でしょうか?
何だと思いますか?
それは、対象者のストレス源になっている『状況や環境』で、確かに、変えることは難しいでしょう。
でも対象者自身の『受け止め方(認知)、行動、習慣』は“変えられる”と思いませんか?
つまり『何も変わらない』のではなく、対象者さん次第で『変わる・変えられる部分もある』ということです。
ここまで読んできて、あなたから対象者さんにかけたい言葉が思い浮かんだでしょうか。
その言葉を相手に返すことができて、あなたのモヤモヤが少しでも晴れてくれたらいいなと思っています。
ピュア産業看護事務所の保健師今田から、
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