『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。
産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。
保健指導中の質問にアタフタ
先日、保健指導の面談で「〇〇って健康にいいんだよね?」と対象者の方に質問されました。自分が不勉強な分野の質問だったので焦ってしまい、ついごまかすような回答に…。
こんなとき、どう対応すればよいのでしょうか。
保健指導中に対象者から質問があるのは素敵なことです。
自分の健康に関心を持っているからこそ質問が出るのだと思いますから。
あなたへ質問してくれたのも、対象者との関係づくりがうまくいっているからでしょうね。
こういうとき私たち看護職は専門家として認められた気がしてうれしくなりますよね(笑)
そして、専門家なのに質問に答えられないのはマズいと思って、なんとしてでも答えようとしてしまいます。
でもそこが落とし穴なんです。
とえどんなに知識が豊富でも、すべての質問に回答できるわけがないですし、わからないときは正直に「わかりません」といっても大丈夫。
可能なら後で調べて正しいことを回答しましょう。
実は私も、ご質問者のように不勉強分野の質問に焦ってごまかしたこともありますし、得意分野の質問はうれしくなってしつこく説明しすぎたせいで、逆に対象者の興味をそいでしまったこともあります。
数々の失敗を経て、今はこう考えるようになりました。
「一般的な内容の答えならネットで検索できるし、近い将来AIが詳しく回答するようになるだろう。
専門家である看護職(目の前にいる生身の人間)の役割は、質問に単純に回答する以上の付加価値を提供することではないか」と。
そこであなたに提案したいのは、「質問に“すぐにピンポイントに”回答できることはそれほど重要ではない」という考え方です。
むしろ「対象者が質問するほど関心を持っているならそれをきっかけにして、“どのように知識量を増やし、動機づけを行うか”」という視点で対応を工夫してみませんか。
質問への対処の仕方が根本から変わると思いますよ。
たとえば、対象者から「〇〇って健康にいいんだよね?」と質問されました。
〇〇が健康にいいのかどうかわかりません。
さあ、どう対応しましょうか?
ご参考までに私が心がけていることを3つ紹介しますね。
①質問にすぐに答えない
②質問自体を支持する
③質問の背景・思いを探る
です。そしてこの3つをこんなふうに使います。
①「あら、〇〇のことが気になってるんですか」
(質問にすぐに答えない)
②「いつも健康のことを意識されてるからですね。いいですね~」
(質問自体を支持する)
③「ところで、〇〇が気になったのはどうしてですか?」
(質問の背景・思いを探る)
〇〇が健康にいいか、よくないか。
“すぐにピンポイントに”回答できれば、喜ばれるかもしれません。
でも、対象者の思考は深まらないので、時間がたてば忘れられてしまう可能性も高いです。
一方、質問したこと自体をほめられて、それをきっかけに自分の生活を振り返る機会を与えられたら・・・・・・。
対象者さんはもっと深く考えようとするでしょう?
そのうえで看護職と一緒に「自分の健康のために〇〇が必要かどうか考える」、そんな保健指導ができたらいいなと思いませんか。
もしかしたら、「やっぱり〇〇に頼らないほうがいいね」と自ら言ってくれるかもしれませんよ(笑)
ピュア産業看護事務所の保健師今田から、
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