『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。
産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。
担当業務が変更に。必要な準備は?
10年ほど保健指導業務から離れていましたが、再び保健指導を担当することになりました。ブランクがあるので、今主流の指導方法もよくわかりませんし、きちんと対応できるか不安です。どんな準備をしておけばよいでしょうか。
医療や看護に関する知見は日進月歩で、昨年までの常識が、現在は正反対になっていることも珍しくありません。
書籍や研修、同業者との会話などで、初めて目や耳にする内容があると、知らないのは自分だけのような気がして焦ったりしますよね。
私もそうです(笑)。
最新トレンドの知識やノウハウについていけていないと不安を感じるのは、ブランクがあろうがなかろうが同じではないでしょうか。
むしろ、かつての経験だけを頼りに、ゴリ押しで乗り切ろうとしない姿勢は素敵だと思います。
実は私自身も数年間、看護の現場から離れた時期がありました。
復帰前はかなり不安が強かったですが、実際に復帰して感じたのは、「本質的なことは変わっていないんだな」ということです。
学校で習った基本的な内容や、かつて実践していたときに重要だったことは、時を経ても通用しました。
ですから、あなたもいったん不安を横において、復帰前の準備として『保健指導の基本的事項』を振り返ってみてはいかがでしょうか。
たとえば教科書(*)には、保健指導とは
『個人・家族または集団を対象として、健康を保持・増進し疾病を予防すること、疾病に罹患した場合は悪化しないようにするための自己管理(セルフケア)などについて、専門的な助言と援助を与えること』
と書かれています。
大事なのは『対象者のセルフケア能力を高めること』ですよね。
そのために、保健指導に活用できる行動変容理論を復習しておくのもおすすめです。
まずは基本の方法論で始めて、慣れてきたらトレンドの方法論を取り入れるというのもアリだと思いますよ。
私のところにも、異動や転職、結婚、出産・育児などの理由で一時的に看護の現場を離れ、再就職や復帰に不安があるというご相談をよくいただきます。
私からは基本の復習をおすすめしていますが、「やってみたら新たな気づきやヒントを得られてよかった」と教えてくれた方もいらっしゃいました。
それから、ブランクを“保健指導以外の場所で手に入れた新たな武器”と考えてみてください。
対象者の生活にかかわる私たち看護職の仕事には、どんな経験もひとつも無駄にはなりませんよね。
保健指導を離れていた期間に、さまざまな知識や体験を得て、人の生活と健康をとらえる視野が広がったはずです。
あるべき姿や正解にこだわりすぎず、対象者に寄り添う余裕をもった保健指導につなげられたらいいと思いませんか。
最後にもうひとつお伝えしたいのは、保健指導では看護職の立ち振る舞いも見られているということです。
たとえば、自信のなさが態度にあらわれてしまい、おどおどしたり、勝手に弱気になって「(指導内容を)無理ならやらなくてもいいです」と引っ込めたりするような看護職の話を、対象者は受け入れてくれるでしょうか。
保健指導は対象者と看護職の相互作用によって成り立っています。
至らないところは認めつつ、堂々とあなたの個性やよさを活かして対象者と向き合ってくださいね!
(*引用文献「標準保健師講座2 公衆衛生看護技術」中村裕美子(著者代表)/(株)医学書院.2017年)
ピュア産業看護事務所の保健師今田から、
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