『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。
産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。
不安を抱える職場へのフォロー
メンタルヘルス不調で休んでいた方が復職予定です。職場の方に話をきいてみると、上司だけではなく同僚の方も復帰後の対応に不安を抱えていることがわかりました。
復職にあたってどのようにフォローしていけばよいでしょうか。
復職支援では、つい復職者ばかりに意識が向いてしまいますが、受け入れる職場(上司や同僚)の不安にも気づけているのが素晴らしいですね。
受け入れ側も「配慮が必要なのはわかるけれど、何をすればいいの?」「自分の対応のせいで悪化したらどうしよう」など不安や戸惑いが多いです。
そこで支援としておすすめしたいのは『職場の受け入れ教育』の実施です。
職場全体がメンタルヘルスを自分事としてとらえているので、高い教育効果が期待できますし、この機会に職場のメンタルヘルス対応力を上げられるといいですよね。
職場の受け入れ教育は、できれば復職前に、職場のメンバー全員参加で実施すると効果的です。
内容はメンタルヘルスの一般的知識、職場メンバーの対応の仕方、産業看護職の役割の紹介などが考えられると思います。
たとえばメンタルヘルスの知識は、復職者の同意が得られる範囲で実際の状況と絡めて話をすると理解が深まりますし、
復職後のスケジュールの目安(時短勤務、定期的な面談、元の業務への復帰時期など)を伝えておけば職場の協力が得られやすいですよ。
職場メンバーの対応については、
「あいさつはこちらから行う」
「復職者に対しては『困ったら言って』ではなく、『手伝うことがある?』と尋ねる」
など具体的に配慮の仕方を説明しましょう。
また、必ず伝えたいのが『メンバー全員に何らかの負担がかかっているので、お互いにいたわりやねぎらいの言葉を掛け合おう』ということ。
グループワークで不安や対応方法を共有し合うのもいいですね。
産業看護職の役割を紹介するときには、看護職は復職者と職場メンバーの両方を支援する役割があり、メンバーの愚痴も聞くしアドバイスもするから、いつでも相談してほしいと伝えておきたいです。
そして復職後は看護職がまめに職場へ様子を見に行き、メンバーにも声かけをするよう心掛けるといいでしょう。
私の経験では、受け入れ教育の実施後は、職場へ行くとメンバーのほうから声をかけてくれるようになりました。
「最近、作業能率が上がってきたよ」など職場での復職者の様子を教えてくれたり、
「調子悪そうだったから健康管理室へ行くようにすすめたけどそれでいい?」など対応の仕方について質問されたり、
時には「今田さんが見守ってくれてるから安心だよ」とうれしい言葉もありました。
その職場のパート社員によれば、元々は職人気質で先輩・後輩関係が厳しすぎる印象の職場風土が、メンバー同士で配慮しあうようになって少し柔らかい雰囲気に変わったそうです。
復職支援成功のカギは環境整備だと実感した事例です。
職場の受け入れ教育でメンバー全員に共通認識が醸成されると、その後の支援がとてもやりやすいです。
受け入れ教育の実施が難しい場合でも、できるだけ多くの職場メンバーに働き掛けておきたいですね。
お互いに支え合う関係性を構築しておけば、私たち看護職自身が不安になったり、対応に迷ったり、気を遣いすぎて疲れ切ったりしたときでも、
復職者や職場メンバーにきっと助けてもらえるはずです。
ピュア産業看護事務所の保健師今田から、
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