vol.11【非専門職とのコミュニケーション】

産業看護職駆け込み寺
産業保健師 今田
産業保健師 今田

『産業看護職駆け込み寺』は、「保健事業に携わる人の情報誌 へるすあっぷ21」で、2020年4月号~2022年3月号まで連載されました。

産業看護職のさまざまなお悩みに、ベテラン産業保健師の今田が教科書的な正解とはちょっと離れた斜めの視点(?)からお答えしています。

今月のお悩み <2021年2月号>

非専門職とのコミュニケーション

 社員の喫煙率が高いため、事業所内の喫煙室の廃止を総務部長に何度か提案しているのですが、まったく聞く耳をもってもらえません。健康施策を提案しても却下されることが多く、どうすれば話を聞いてもらえるのかと悩んでいます。

近年は喫煙対策推進にかなり追い風が吹いていますが、それでもなお喫煙を続ける人や喫煙所撤廃に反対する人たちを説得するのは、逆に難しくなった気がします(笑)。

あなたの熱意や使命感だけでは総務部長が動かないようなので、「押してダメなら引いてみろ」で戦略を考えてみましょうか。

まずは、門前払いされないために【説得の手段の工夫】をしてみましょう。

たとえば、産業看護職の孤軍奮闘だから聞く耳をもってもらえないのなら、産業医や影響力のある管理職などを味方につけて、その威光をバックに説得を試みるというのはどうでしょうか。

また、日ごろから総務部長を説得し慣れている総務部メンバーの協力を得るのもよいかもしれません。

アンケートで社員の声を集めて数の力を使ったり、労働衛生週間などのイベントや他の労働衛生施策と抱き合わせにして提案してみてもよいでしょう。

提案を聞いてもらう機会を確保するのと併せて、【説得の内容の工夫】も進めておきます。

よくいわれるのは、資料に数字を入れる方法ですね。

たとえば、喫煙室の出入り時に煙が流れ出て社員からの苦情が多いことを、「多くの人が迷惑している」ではなく「調査で約7割が迷惑と回答している」と数字で示すと説得力が違います。

また、社内の他事業所や同業他社との比較、世間一般の動向などと併せて示す方法もよく使われます。

「うちは他の事業場より遅れています。これはけっこう恥ずかしいですよね。なんとかしましょう」という論調で交渉するわけです。

ちなみに、私のかつての上司は「他の会社はどうなの?」が口癖でした。

当時は姑息だと思いつつ使っていましたが、意外と効きましたね(笑)。

それから、複数の案を提示するのも効果的です。

めざしたいのは「喫煙所の全廃」ですが、「喫煙所の数を半減」「喫煙所を不便な場所に移す」などの妥協案も一緒に提示します。

すると、提示された側はその中から選ばなければいけないような気になりやすいそうです。

総務部長が喫煙所廃止に無関心(あるいは反対?)な理由はわかりませんが、もし喫煙者の反発や撤去費用などが理由であれば、

「全廃は無理だが、半減ならなんとかなるか」と検討の余地が出てくるかもしれません。

資料にどんな内容を載せるかは、プレゼンのノウハウ本が参考になりますよ。

社内のフォーマットに則って作成し、もし総務部長がやる気になって上層部に話をあげるとき、そのまま使える資料になっていれば、なお好評価です。

会社の中では、立場が違えば物事を判断する基準も変わります。

必ずしも正論が通るわけではないので、まず相手の価値観を知り尊重する姿勢が必要です。

そして、あなたができる限り努力して工夫したにもかかわらず、総務部長が拒否し続けるなら、

衛生委員会や健康づくり委員会に議題をあげて一緒に取り組むことから始めるなど、交渉先を変えるのもひとつの手です。

あなたの事業所からたばこの煙が消える日が来るのを応援しています!

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